鎌倉彫 塗り直し 手鏡編 vol.3

伝統工芸品に指定される『鎌倉彫』
その鎌倉彫は匠な彫刻技と漆の優雅な光沢が織り成す美しさで人々を引きつける。

そんな鎌倉彫の修復についてお話します。
今回は鎌倉彫の手鏡の修繕(塗り直し)についてお伝えします。
先日ご依頼を頂き、古来より伝統的な角手の形をした手鏡をお預かりしました。
表面は漆の艶がとび、小傷と凹みが目立つ状態でした。こちらを工房で修繕していきます。

作業前 表面は漆の劣化と縁に凹みキズがあります
作業前 表面:漆が乾き艶もなく凹みキズが目立ちます
作業前 鏡面:縁にすれ傷があります
作業前 鏡表面:縁にすれ傷や凹みがあります
作業前 手鏡の持ち手部分に凹みや小傷かあります

先ずは作業に入る前に鏡を外します
今回は鏡の交換もご依頼頂きました

280番の粗目の耐水ペーパーで古い塗装面を水研ぎしながら丁寧に落とします。中の塗装面が表れたら、ヘラで錆漆しを(サビうるし)錆付けする。錆漆は生漆と砥の粉を混ぜたもの(漆のペースト状のもの)錆付けが終わり乾燥したら耐水ペーパーでサビ研ぎして滑らかに仕上げます。

この錆付けと錆研ぎの下地作りの工程をきちんと行わないと、次の黒中塗りの漆の喰い付きが悪く漆が剥がれてしまいます。丈夫で長持ちしする漆塗り製品は下地工程に時間を掛けます。

【黒漆で中塗り工程がこちら】中塗りの作業は、黒塗り➡乾燥➡水研ぎを4回繰り返す。工房ごと工程や塗り回数に違いはありますが、当工房は4回繰り返すことで肉が付き丈夫な漆の層を作ります。また漆は季節に寄って乾き具合に違いが出ます。漆の乾きが遅い時期は漆室(うるしむろ)の室内の湿度(しつど)を上げ調整します。漆が急激に乾燥すると表面に縮みが生じ仕上がりに影響を及ぼす。そのため湿度調整が重要となります。

黒中完成写真 鎌倉彫陽雅堂

【黒中塗り完成写真】
黒中塗り➡乾燥➡水研ぎを4回繰り返し中塗りが完成した状態がこちら
漆の小さなつぶや気泡(きほう)など均一にするため水研ぎは重要な工程である。

黒中(鏡面)完成写真 鎌倉彫陽雅堂

【上塗り工程】ここから上塗り工程に移ります。

【上塗り工程】
漆に朱の粉を混ぜた朱漆を作る。朱漆で上塗りした後に、生乾きの状態を見計らい、マコモを刷毛で蒔きつける。乾燥後、布に水と砥の粉をつけたものでマコモを研ぎ出す。このマコモ研ぎは彫刻の高低差と塗り色の明暗を表現するもので、研ぎの加減は職人の経験に頼るもの。強く研ぎ過ぎると下の層が表れ、弱いと彫りの模様が現れず、漆色の明暗もはっきりせず、仕上がりに立体感が生まれない。更に生の漆で漆拭き➡乾燥➡漆拭きを繰り返す。この工程を3回繰り返すことで表面を固め丈夫さと上品な艶が生まれます。

こうして・・・
『鎌倉彫』は味わい深く魅了するものとなります。

【塗り直し完成の様子がこちらです】

【完成品がこちら】
「しっとりした漆の質感」
「匠な彫刻の美しさが表れます」

塗り直し完成品 鎌倉彫陽雅堂
表面の完成の様子

丁寧に塗りと研ぎを繰り返すことで
「彫刻をより際立たせ」
「優雅な漆の艶が生まれる」

鏡の持ち手部分もこの様な状態に仕上がります
鏡面も綺麗に仕上がっております
塗り直し完成品 鎌倉彫陽雅堂
塗り直し完成品 鎌倉彫陽雅堂

鎌倉彫陽雅堂では、今回ご紹介致しました手鏡の塗り直しなど鎌倉彫製品の塗り直し、修復など、お直しに関してのご相談を承ります。割れてしまったお盆や漆が剥げて見栄えが悪くなった製品の修復など致します。修復費用は製品の大きさや種類、修理の内容によって異なります。事前にお見積り致します。

お見積りは基本的に製品をお預かりして取らせて頂きます。ご来店ください。遠方でご来店頂けない場合にはメールで写真をお送りください。ご希望する修理内容をお伝えください。
(製品の状態が分かる様に表と裏の写真、製品の寸法を明記ください)
*また状態や修理内容に寄り、お断りする場合も御座います。予めご了承ください。

お客様には安心してお預け頂けるように努めて参ります。

塗り直しや修理に限らず鎌倉彫関連のご相談、オーダー品などお問合せください。
記念品・結婚のお引き出物など多数商品を取り揃えております。

関連記事
鎌倉彫 塗り直し 手鏡編 vol.2 はこちら

関連記事
鎌倉彫 塗り直し 手鏡編 vol.1 はこちら

【短縮営業時間のお知らせ】
 平日10時〜16時
 土日10時〜17時
新型コロナの影響により店舗の営業時間を当面の間、短縮して営業致します。
お客様にはご不便をお掛け致しますが、何卒ご理解頂きます様お願い申し上げます。

    お問合せは
メールでのお問合せはこちら
鎌倉彫陽雅堂 ☎ 0467‐25‐3736

鎌倉彫 塗り直し 手鏡編 vol.2

鎌倉彫手鏡の塗り直しのお話

日頃、手鏡の塗り直しについてお問合せを頂きます。漆器製品は長くお使い頂くと、下地層の漆が現れます。これは表面の漆が擦れることで、所々に下地に使われる黒塗りが覗き、アンティーク感が増し、何よりも時の経過と共に愛着が湧いてきます。

鎌倉彫は下地→中塗り→上塗りの順に、幾重にも塗りを重ねることで丈夫に仕上げることが出来ます。母から娘へと受け継がれた手鏡など古傷ひとつにも想い出があります。

そんな想いの詰まった手鏡を塗り直す事でまた息吹きが吹き込まれ生き続けます。

先日の手鏡塗り直しの様子をご紹介致します。

ご覧の写真(塗り直し前)は手持ち部分の塗りは剥げて、木地肌が見えています。
角も何かにぶつけた痕がありへこんでいます。こちらを綺麗に修復して行きます。

先ずは古い漆を剥がす作業から始めます。

コクソ漆でヘラ付け作業の様子です。簡単に言うと車のヘコミを修正するのと同じです。板金の際にキズやヘコミ部分にパテを埋めて、余分なパテは研いで落とし平らにならします。鎌倉彫の修復も同じ様に、傷やヘコミにはコクソ漆を埋め込み、乾燥後、研いで平らにします。

簡単そうに見えますが、このヘラを自在に使いこなせるようになるにも10年から15年程の年月が掛かると言われます。漆の特性を理解し、気温や湿度を見極め、漆の粘質調整が出来る様になり、初めて漆職人と認められると言われます。

鎌倉彫を制作するには彫刻刀はもちろん、漆職人にはヘラと刷毛は欠かす事はできません。
次回は刷毛について詳しくお話します。

こちらが塗り直し完成の写真です
新品と見間違える程、綺麗な仕上がりです。

鎌倉彫陽雅堂では鎌倉彫の製品の塗り直しや割れたお盆の修復など承っております。
鎌倉彫のことならお気軽にお問合せください。

関連記事
鎌倉彫の修理・塗り直し手鏡編 vol.1はこちら

関連記事
鎌倉彫の修理・塗り直し手鏡編 vol.3はこちら

【短縮営業時間のお知らせ】
 平日10時〜16時
 土日10時〜17時
新型コロナの影響により店舗の営業時間を当面の間、短縮して営業致します。
お客様にはご不便をお掛け致しますが、何卒ご理解頂きます様お願い申し上げます。

    お問合せは
メールでのお問合せはこちら
鎌倉彫陽雅堂 ☎ 0467‐25‐3736

鎌倉彫手鏡の塗り直し

長年愛用された鎌倉彫の手鏡の塗り直しの依頼を受けました。
写真の様に手持ち部分は木地が見えるまで剥げて、表面には無数のすれ傷が入り、経年の劣化を感じる状態でした。

お客様から「祖母の形見なんです…」
店…「それでは心してお預かり致します」と
そんな会話のなか、手鏡の塗り直し修理を受けました。

手鏡塗り直し 鎌倉彫陽雅堂

工房にて表面の古い漆しを落としていきます。
同時に小さな傷も丁寧に水を付けながら耐水ペーパーで水研ぎをして滑らかにしていきます。小さな傷は耐水ペーパーを当てる事で傷は目立たなくなります。大きな傷やヘコミ部分には、生漆(きうるし)に砥の粉(とのこ)と水を混ぜ、練り合わせた下地さびをパテとして傷穴にヘラで埋めて平らにします。

手鏡塗り直し 鎌倉彫陽雅堂

手鏡の持ち手部分には古い漆と汚れが残っていますが、塗り直す前には、汚れや古い塗装面を耐水ペーターで全て落とします。この時使用する耐水ペーパーは粗目の280番~400番のペーパーを使用します。

手鏡塗り直し 鎌倉彫陽雅堂
手鏡塗り直し 鎌倉彫陽雅堂
手鏡塗り直し 鎌倉彫陽雅堂

表面を磨き落とす際に、柄の縁部分だけ三角刀で縁取り(ふちどり)していきます。こうする事で元の輪郭が蘇えり綺麗に仕上がります。

手鏡塗り直し 鎌倉彫陽雅堂

下記写真が完成後の手鏡です。

手鏡塗り直し 鎌倉彫陽雅堂

見違える様に綺麗な仕上がりです。
輪郭も埋まることなく、はっきり縁取りが見えます。手間を惜しまず、手仕事による鎌倉彫の塗直し工程です。

手鏡塗り直し 鎌倉彫陽雅堂

こちらのお客様は鏡の交換も希望されました。
手鏡の塗り直し工賃は状態や作業内容によって異なります。
今回は塗り直し+鏡交換で総額17,000円を頂戴しました。

決して安い値段ではありませんが、お客様にとっては大切な形見の品です。これからもご愛用頂ける事と願っております。

手鏡塗り直し 鎌倉彫陽雅堂
手鏡塗り直し 鎌倉彫陽雅堂
手鏡塗り直し 鎌倉彫陽雅堂
手鏡塗り直し 鎌倉彫陽雅堂

鎌倉彫陽雅堂は休まず営業致します。
営業時間(年中無休) 
平日9:00~17:30
土日9:00~18:00

  お問合せは
メールでのお問合せはこちら
鎌倉彫陽雅堂 ☎ 0467‐25‐3736